宮本武蔵 第三巻
武蔵の、その年も、
年の瀬、振り返りの時期にあった。
「…あ、除夜の鐘だ」
無意識に、がばと身を起した時、数日来の疲れは洗われていて、彼の頭脳は冴えきっていた。
洛内洛外の寺院の鐘が、いんいんと、無明から有明のさかいへ鳴っていた。
諸行煩悩の百八つの鐘は、人をして一年のあらゆる諸行へ反省を呼び起させる。
―おれは正しかった。
―おれは為すことを為した。
―おれは悔いはない。
そういう人間が何人あるだろうかと武蔵は思った。
一鐘の鳴るごとに、武蔵は、悔いのみを揺すぶられた。ひしひしと後悔されることばかりへ追憶がゆくのである。
今年ばかりではない。―去年、おととし、先おととし、いつの年自分自身で恥じない月日を一年送った例があるだろうか。悔いない一日があったろうか。
・・・(中略)・・・
―われ事において後悔せず!
「よし」
武蔵は、満足した、そして胸に誓った。何事にも自分の為したことに後悔はしないというような高い境地へまで到達するには、まだまだこの身を、この心を、不断に鍛え抜かなければ及びもない望みとは思うのであったが、
(必ずそこまで行き着いてみせる)
と、彼は自分の胸の遠いところへ、理想の杭を打って、堅く信念するのだった。
吉川英治 著
- 作者: 吉川英治
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1989/11/01
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おもろー指数 ★★★★☆
今年も残すところ、あと2ヶ月!早い!
振り返りだよ、振り返り。
振り返って次に繋げる、
中々、
なかなか、難しいですね、実践するには。
縁あって、ジョギングを始めて。
比較的、、苦にならずに継続できている今日この頃、まずは続けることだな。
そして振り返りね、はいはいやるよー! >_<b
吉川英治 宮本武蔵。
通勤時間が一瞬で、終わります。 おもろ〜!